フェンダーストラトキャスターの歴史

第1章 誕生

ストラトキャスターは、1954年に「レオ・フェンダー」によって開発されました。彼はギターだけでなくベースやアンプなども開発し、どれもが名機と呼ばれています。

レオ・フェンダー(1909年8月10日-1991年3月21日)

ストラトキャスターは、1951年に発売されたテレキャスターに改良を加えて制作されました。因みにストラトキャスターの由来は成層圏という意味の「ストラトスフィア」と、ラジオやテレビの出演者といった意味の「ブロードキャスター」を掛け合わせた造語です。

①コンター加工

ボディーの裏側をわずかに削る事によって、より体に密着するので弾きやすさが向上します。ストラトキャスターから採用され、後のフェンダー製品にも受け継がれました。

②3wayピックアップ

ピックアップとは弦の振動を音に変える装置で、銅線を巻いた磁石の棒でできています。テレキャスターでは2つだったものが、3つになりました。ピックアップが増えることによって、2つのピックアップを同時に鳴らしたハーフトーンと呼ばれる音色が生まれました。この音色は、ジミ・ヘンドリックスが編み出したと言われています。

③トレモロアーム。

アームとは、ビブラートをかけるための機能です。ストラトが発売されるまでのものは、チューニングが狂いやすいことや大幅な揺れができないといった欠点もありました。そこでギター本体の裏側にバネをつける事により、欠点を克服しました。

第2章 発売から人気低迷

発売当初は、バディーホリーやハンクマーヴィンらが使用していました。

バディーホリー(1936年9月7日 – 1959年2月3日
ハンクマーヴィン(1941年10月28日 – )

後にストラトの人気を決定づけるエリッククラプトンも、彼らの影響でストラトキャスターを手にする事になります。

エリッククラプトン(1945年3月30日)

60年代半ばにギター人気が過熱し、上位機種であるジャズマスターやジャガーが発売されました。ですが、他の機種に人気を奪われストラトキャスターは低迷していきました。

ジャズマスター
ジャガー

そんな危機を救ったのが「ジミヘンドリックス」です。

ジミヘンドリックス(1942年11月27日-1970年9月18日)

左利きだった彼は、右利き用のギターをそのまま使用したギタリストでした。特に印象的なのがアームを駆使した演奏で、後のギタリストに多大な影響を与えました。彼が活動していた期間は5年程ですが、現在でも彼のモデルのギターが生産されている事からその人気の高さが伺えます。

やがて70年代に入りハードロックが全盛期をむかえ、レッドツェッペリン、ディープパープルらの個性的なバンドが次々と現れました。なかでもディープパープルのギタリスト、リッチーブラックモアはストラトキャスターを使用していました。

リッチーブラックモア(1945年4月14日-)

ワイルドなパフォーマンスだけなく、クラシックの要素を取り入れた早弾きも彼の特徴でした。リッチーは60年代後半から製造された、通称ラージヘッドと呼ばれるモデルを使用していました。

左がラージベット

また、彼のギターの特徴としてスキャロップ加工が挙げられます。指を当てる部分を丸く削る事により、通常よりも軽いタッチで演奏できます。現在でも、ハードロック好きの間では同じモデルにこだわる人もいる程です。

左がスキャロップ加工されたギター。

そのまま人気が続くかに思われましたが、80年代に入りフェンダー社は低迷してしまいます。理由は幾つかありますが、大量生産による品質の低下や電子楽器の台頭などがあります。

第3章 復活

初めにストラトキャスターの危機を救ったのがジミヘンドリックスなら、次はエリッククラプトンです。エリッククラプトンは70年代頃からストラトキャスターを使用していましたが、80年代半ばには、メインギターを探していました。

それを聞いたフェンダー社は、開発されたばかりの試作品を彼に渡しました。のちのクラプトンモデルにも採用される機能である、ミッドブーストを搭載したギターです。これは音を太くする機能であり、弱点であった音の細さを克服することが可能になりました。

このギターを気に入ったエリックは、フェンダー社に自身のモデルの制作を依頼します。制作にあたってエリックは、長年愛用してきたストラトを再現することを望んでいました。その為、イギリスからアメリカまでギターを運びサイズを計測するほどのこだわりようでした。

その後約2年の歳月をかけ、初のエリッククラプトンモデルが完成しました。86年頃にはライブやレコーディングで使用するようになり、86年には正式に契約を交わし翌年販売が開始されました。現在も生産されており、人気のギターとなっています。

フェンダー エリッククラプトンモデル

余談ですがエリックが愛用していたストラトキャスターについては、彼が設立したリハビリ施設「クロスロード・センター」の資金のため95万9500ドルの値段がつきました。

クロスロードセンター 1998年にカリブ海のアンティグア島に、薬物患者のための更生施設として設立された。

このギターは、70年代初頭に1本100ドル程で購入したそうです。(ちなみに当時の1ドルは日本円で360円)

現在では考えられないような値段ですが、当時ストラトは生産中止寸前になるほど人気がなかった事が原因です。6本購入し3本は知人にプレゼントし、残りの3本を分解し気に入ったパーツを組み立て使用していたそうです。このギターは黒だったことから「ブラッキー」と呼ばれ、その名称はクラプトンモデルにも引き継がれます。

1980年代頃まで、エリッククラプトンが愛用していたギター。通称「ブラッキー」

第4章 進化

ストラトの特徴の1つに、カスタマイズ性があります。現在様々なストラトタイプのギターが発売されていますが、これは他のギターにはない特徴です。レオフェンダーはラジオの修理をしていたので、生産効率や修理のしやすさを重視していました。これは、他社にはない発想であり、現在のストラトの多様性に繋がっています。

起源は、エディーヴァンヘイレン登場以降と言われています。

エディーヴァンヘイレン(1955年1月26日 – 2020年10月6日

デビュー当時彼は自作のギターを使用しており、ギブソンの音でアームが使用できる改造を施していました。

彼の登場後は「スーパーストラト」と呼ばれ、80年代半ばに流行。現在では「コンポーネントギター」と呼ばれ、より多彩な仕様となりました。ジャンルも、ジャズ/フュージョン、ポップスにいたるまで幅広く使用されました。

最後に、ストラトキャスターの年代別の特徴を紹介します。尚、使用されている木材の違いなど専門的な部分は割愛しています。

50年代

明るく歯切れの良い音が特徴です。まだ手作業での工程が多かった為、年代によって個体差があることが特徴です。愛用しているギタリストはエリッククラプトン、バディホリーなどがいます。

60年代

59年頃から木材が変更されたことにより、太くのびのある音になります。完成度が高く人気もある年代の為、他のメーカーのお手本にもなっています。カスタムカラーもこの年代から始まり、66年からはラージヘッドが採用されました。ギタリストはスティーヴィーレイヴォーン、ジョンフルシアンテ、ジミヘンドリックスなどがいます。

70年代

この年代はリッチーブラックモアやイングヴェイマルムスティーンらが愛用していたこともあり、ハードロック系のギタリストから人気があります。現在では定番となっているピックアップセレクターが5点式になったのも77年からです。

80年代

この年代になると、フェンダーの知名度の増加に伴い他社のコピーモデルが出回り始めます。

対策としてかつてのモデルの復刻版や、フェンダージャパンの設立を行いましたまた、87年にはカスタムショップが設立され現在の体制が出来上がりました。

動画はこちらから https://youtu.be/614ysNVjy6g


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